【レビュー】『こわいもの知らずの病理学講義』
今回の書籍
タイトル :『こわいもの知らずの病理学講義』
著者 :仲野徹
出版社 :晶文社
発売日 :2017/09/19
価格 :¥2,035
読了年月 :2021/09/24(学部3年)
作品紹介・あらすじ:
ひとは一生の間、一度も病気にならないことはありえません。ひとは必ず病気になって、死ぬんです。だとすれば、病気の成り立ちをよく知って、病気とぼちぼちつきあって生きるほうがいい。書評サイト「HONZ」でもおなじみ、大阪大学医学部で教鞭をとる著者が、学生相手に行っている「病理学総論」の内容を、「近所のおっちゃん・おばちゃん」に読ませるつもりで書き下ろした、おもしろ病理学講義。しょもない雑談をかましながら病気のしくみを笑いとともに解説する、極上の知的エンターテインメント。
読みやすさ:★★★☆☆
200ページ4章の内訳は、細胞(1章)・血液(2章)・がん(3・4章)なので、がんに興味が無ければ辛いかも。医学知識ばかりだと読むのが疲れることに配慮したのか、トピックスに関連した歴史上の小噺みたいなのも多く、飽きさせない工夫がみられる。
なにより、著者が「新分野を学ぶにはまず単語を正しく理解すること」と言っており、読者が疑問に思いそうな単語についてはきっちり説明してくれている。(そのせいで冗長に感じる部分もあるが、既知の単語なら読み飛ばせばよい。)
面白さ:★★★☆☆
病理学とはなんなのかという話や歴史上小噺は面白かった。
医学知識:★★★★★
非医療関係者よりは知識があるよ、程度の医学生である私にはかなりちょうどよかった。聞き覚えのある物質や概念を用いて病気のメカニズムを簡潔に説明してくれるので、「ああ、あの遺伝子はこういう役割を担っていたんだな」といった理解ができる。決して難しい内容が理解できたというわけではないが、明らかに理解の一助となっている。
感想
医学部3年生(底辺)には良著であったと断言できる。ただ、このように感じるのは医学生くらいじゃないかとも思う。非医療者にはなじみのない言葉が多すぎて疲れそうであり、医師には平易すぎる恐れがある。
ちなみに、「学生相手に行っている「病理学総論」の内容を、「近所のおっちゃん・おばちゃん」に読ませるつもり」と書いてある。医学生や近所の中年を評価しすぎだと思う。
著者の中村徹氏は、以下のように述べられている。
知らないことを学ぶときに大事なことが二つあります。 ひとつ は、 大きな流れ ─ ─ ものごとの原理とか大枠といってもいいかもしれません ─ ─ をきちんととらえることです。
(中略)
もう一つ、新しい分野を勉強するときに大事なのは、言葉の意味をきちんと理解しておくことです。
私は常日頃から非常に似通った考えだったので、この考え方がめちゃくちゃ実践されている本作は非常に良い構成、語り口に感じた。私と同じように、この考え方に共感できる人にはぜひ読んでもらいたい。
メモ:
本作内でいろいろな本を推してくるのだが、なかなか気になるものもあったので、そちらも読みたいところ。