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【レビュー】『仁義なきキリスト教史』

医学関係ないけどいい本だったので記録を残す。

今回の書籍

タイトル :『仁義なきキリスト教史』

著者   :架神恭介

出版社  :筑摩書房

発売日  :2016/12/10

価格   :¥825 (kindle版)

読了年月 :2021/11/10(学部3年)

 

作品紹介・あらすじ:

おやっさんおやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ~!」キリスト教2000年の歴史が、いま果てなきやくざ抗争史として蘇る!「あいつら、言うてみりゃ人の罪でメシ食うとるんで」エンタメで学べる画期的キリスト教史入門! 

 

読みやすさ:★★★★☆

 キリスト教のお話といえば、門外漢にはとても読みにくい、つまらないものというイメージだった。それを、「信仰あるものはみんなヤクザみたいなものとして描こう」というワンアイデアで一挙に解決している。任侠道の独特なコトバに慣れていなければ、中々読みづらいかも?広島人なら問題ありません。

 事実(説)を描く慎重さを持ちながらもエンタメ性を意識して書かれているので、読みやすいし面白い。

面白さ:★★★★★

 宗教用語をヤクザ擁護に置き換え、登場人物が全員チンピラというぶっ飛んだ世界観。宗教が今よりももっと力を持ち、政治的にも主役級だった時代の話なので、西洋人は全員ヤクザである。面白くないわけがない。

知識:★★★☆☆

 小説として楽しく読むために、細かい事実改変もそこそこにある。ただし、解説にもしっかりとどこが改変かを記してあるので、配慮は十分だろう。

 なんとなく聞いたことのある出来事がどういう意味のあるものだったのか、ユダヤ教キリスト教といった宗教ごとの違いはなんなのかなどは本当にわかりやすい。簡単な教養の足しにはなると断言していいだろう。

 

感想

 信仰を持つ者の集まりである教会を、任侠道に生きる者の集まりである組に例え、キリスト組の対外・対内抗争を描いたエンタメ小説。性格のない名前だけの人物たちの織り成す歴史をみても頭に入らないのに対し、こちらは強烈なキャラ描写である。

 お気に入りのエピソードは、文庫版で加筆された一遍であるモーセ編。全員コロス最強狂人ヤハウェの親父、その言いつけを守れない猿のようなイスラエル人チンピラ、その間を取り持ち続ける中間管理職モーセのてんわんやである。モーセといえば海を割って囚人を解放した出エジプトの英雄というイメージなのに、こんな苦労人だったのかという驚きもあった。

 小説を読みたい気分の人にはお勧めしてよいだろう。西洋宗教の信仰者には不快かもしれないのでそこだけは注意されたい。