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【レビュー】『命の格差は止められるか: ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』

今回の書籍

タイトル :『命の格差は止められるか: ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』

著者   :イチロー カワチ

出版社  :小学館

発売日  :2013/07/31

価格   :¥792 

読了年月 :2021/12/25(学部3年)

 

作品紹介・あらすじ:

ハーバードで世界が熱い視線を送る授業がある。日本人教授イチロー・カワチによる健康格差論の授業だ。先進国の中で寿命が短いアメリカと、世界トップ級の日本。この違いは格差にあった。今、格差の広がりとともに日本の長寿は危機に瀕している。格差はストレスを生み、信頼や絆を損ね、寿命を縮める。人々の命を守るには、日本の長寿を支えてきた、格差が少ない結束の強い社会を守るべき―所得、教育、労働、人間関係…あらゆる側面から格差を分析、新たな長寿への可能性を探る。

 

読みやすさ:★★★★☆

もともと教養的な講義のようで、特定分野の専門知識が必要というようなこともない。グラフなどもシンプルなものを分かりやすく説明してくれているので非常に読みやすい。主張したい部分は太字になっているなど、単純だが嬉しい。

面白さ:★★★★★

社会の経済格差がなぜ是正されるべきか、思いもよらない要素(思い当たる要素も多いが)が大事であるという内容なので、「ほ~~」という面白さが満載。

医学知識:★★★★★

読むのに医学知識は全く必要ない一方、読むことで社会医学的知識の基本概念が身に付きやすくなる。なかなか触れることの無い知識なので嬉しい。行動経済学が現代の社会問題に重要であるというのは非常にためになった。

 

感想

「命の格差」という表現から、貧富の差からくる露骨な医療格差の話なのかと思っていたが、そうではなかった。むしろ、貧富問わず医療を受けやすい現代の国家において、なにが「命の格差」というか「健康状態の格差」を生む要因になっているのか、という点を解説してくれる本。パブリックヘルスやソーシャルキャピタルといった概念を研究している。

ちょっと説教臭いところもあるけれど、社会医学の一歩目には良い本であろう。オススメ。

 

自分用メモ:

パブリックヘルス:ある疾患のリスクがわかっているとして、原因となる行動や習慣のうち、どの段階にどれほどの介入をすることで、どれほどの効果が見込まるかを考える。(これはたとえば予防率が低くても安く大勢に施せるなら、差し引きプラスだよね、みたいな考え方?)

パブリックヘルスは個人の健康ではなく、「社会全体の健康」に重きを置いた考え方である。

対象集団において層が厚いところに働きかけるポピュレーションアプローチ。対照集団において高リスク層ひとり一人に重きを置くハイリスクアプローチ。

水道水のフッ素化、塩のヨード化、パンの減塩