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【レビュー】『読む漢方薬 ストレスに負けない心になる「人生の処方箋」』

今回の書籍

タイトル :『読む漢方薬 ストレスに負けない心になる「人生の処方箋」』

著者   :村上文崇

出版社  :双葉社

発売日  :2015/06/20

価格   :¥1,307 (kindle版)

読了年月 :2021/12/06(学部3年)

 

作品紹介・あらすじ:

漢方のフシギ、全部わかります。

・頭痛の患者が2人。漢方医がまったく違う薬を処方。なんで?
・「冬の病気を夏に治す」ってどういうこと?
・「幽体離脱は肝臓の病」? 何言ってんの?
覚せい剤漢方薬から作られたってマジですか?
・1400年前の中国では「化け猫づくり」が一大ブームだった!?
・そもそも、漢方薬ってどうして効くの?

漢方は「難しい」?「堅苦しい」? いいえ、「オモシロい」んです。

ナチュラル志向の高まりとともに、年配の方だけでなく現在若い女性にも注目される漢方薬
「難しい」「堅苦しい」というイメージもありますが、中国四千年の歴史の中で様々な試行錯誤を経て発展してきた漢方薬には、
常識をひっくり返されるような驚きの理論や品目、逸話がたくさん転がっています。

そう、漢方は「オモシロい」のです。
本書は「効率」「正しさ」「固定観念」にとらわれずに頭と心をやわらかくしておき、
「人生を楽しむこと」こそが漢方医学の神髄だと唱える専門医が、
漢方にまつわる「おもしろくてためになる」とっておきのエピソードを紹介するエッセイ集。

デジタルコンテンツプラットフォーム「cakes」にて好評連載された「サブカル漢方大全」を、
大幅に加筆・修正のうえ書籍化しました。 これを読んで頭の体操をし、スッキリ気を楽にしておけば、ストレスになんて負けない人生を送れるはず!

読みやすさ:★★★★☆

まず純粋に読み物として面白い。著者も漢方薬を楽しんでもらおうと考えているようで、難しいことは脇に置いておいて読んで!という感じを受ける。

ちょっと似たような話が多くて食傷気味になったかな。

面白さ:★★★★☆ 

不老不死や男女の産み分け、呪毒といったいかにも俗物的な用途に用いられてきた漢方の話は非常に面白い。元となる虫の種類が無数にある蟲毒は実質最強の毒なのでとんでもなく需要があったが、やばすぎるし怖すぎるので国が蟲毒製造は超重罪とされていたとか。現代の科学からみれば滑稽で面白いし、当時の中国の世界観に思いを馳せることもできる。まことしやかに流布されれば疑う方がおかしいものね。

医学知識:★★★☆☆

前提として漢方の知識を全くもっていなかったので、何でも新しい情報として学べた。ほとんどの話は「古代のトンデモ呪術的漢方伝説」である。中にはそれが現在はどのように扱われているかなどに言及されているものもある。現代日本・中国における漢方の扱いや、コラムでの漢方基礎概念の説明など、簡素に努めているがそれでも十分ためになったと感じた。

 

感想

一番の目的であった「漢方医学への嫌悪感を減らす」は達成できただろう。

マユツバ伝説が多いためにより強く感じてしまうのだろうが、漢方医学は現代の主流である西洋医学、その礎である西洋科学と前提が大きく異なる。そのため、あらゆる要素に「?」が浮かんでしまうのだが、それはもうそういうものであろう。漢方薬の多くにはたしかに薬効があるのだろうが、明らかに研究が進んでいない感を受けた。中国くらいしか研究に邁進していないことや、「○○」という漢方について調べようとしてもその偽物が出回っており質が悪いこと(中国ならさもありなん)が、信頼に欠けるという印象を与えるのだろう。

しかし西洋医学的には解明されていなくても、実例が多くあり信頼に足るのならば問題ない。実際に、現代も用いられている西洋医学の笑気ガスは麻酔作用を発揮する原理がよくわかっていない。謎理論で押してくるから引き気味になってしまうが、一笑に付す理由とはならないというわけだ。日本にも「ウコンは二日酔いに効く!」という怪しい常識があるのと同じなのだろう。なんとなく、自分とまったく異なると感じる考え方にも排他的でない態度でいたいと感じさせられた。

医学知識については、まじめに学びたい人には別の本をオススメしたい。(といっても私には紹介できるようなストックがない。)適当なことを書いているというよりは、漢方理論を詳説する気がこの著者にはないためだ。私は大学の授業を受けてあまりに漢方医学が理解できなかったので、多少なりとも溝を埋めるためという目的で手を出した。その程度ならむしろ適しているのでオススメとなる。