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【レビュー】『ヒポクラテスの誓い』

今回の書籍

タイトル :『ヒポクラテスの誓い』

著者   :中山七里

出版社  :祥伝社

発売日  :2015/05/14

価格   :¥737

読了年月 :2021/09/21(学部3年)

 

作品紹介・あらすじ:

栂野真琴は浦和医大の研修医。単位不足のため、法医学教室に入ることになった。真琴を出迎えたのは法医学の権威・光崎藤次郎教授と「死体好き」な外国人准教授キャシー。傲岸不遜な光崎だが、解剖の腕と死因を突き止めることにかけては超一流。光崎の信念に触れた真琴は次第に法医学にのめりこんでいく。彼が関心を抱く遺体には敗血症や気管支炎、肺炎といった既往症が必ずあった。「管轄内で既往症のある遺体が出たら教えろ」という。なぜ光崎はそこにこだわるのか――。解剖医の矜持と新人研修医の情熱が隠された真実を導き出す、迫真の法医学ミステリー!

 

読みやすさ:★★★☆☆

5本立てで各話は短いのでサクッと読める。小説なので当たり前だが、専門知識は全く必要なく説明してくれるのも読みやすい。

面白さ:★★★☆☆ 

とにかく傲岸不遜な教授のキャラが鼻についたり、フィクションにしてもやりすぎ感のある行動が散見され、気になる人は冷めるかも。

外国人教授の妙なボキャブラリーは結構好き。

医学知識:★☆☆☆☆

あくまで小説であり、法医学ミステリーなので、専門知識がどうこう言うところはナシ。お話を妨げないようにごく少量。

マイコプラズマも菌という生物である限り、抗生物質に対する耐性を作り上げる。例えば従来マイコプラズマ菌にはマクロライド系の抗菌薬が有効とされてきたが、近年 マイコプラズマ菌が遺伝子変異を起こし、この抗菌薬に耐性を作ってしまった。

中山七里. ヒポクラテスの誓い 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 (祥伝社文庫) (Kindle の位置No.2514-2516). 祥伝社. Kindle 版. 

そこらへんは気にせずエンタメとして楽しむのが良し。(コメント)

 

感想

題名の「ヒポクラテスの誓い」は、医術の先駆けである古代人のヒポクラテスによって示された「医者たるものかくあるべし」であり、内容によくマッチしていた。ただ、私個人はそんな古臭いものに盲目的に従う気にならないので、ちょっと読み心地は悪かった。公私混同は絶対だめ!みたいなのはあまりに理解に苦しむ。職務は「私」のためにあるのであって、混同も何も「私」は「公」に勝るとおもうんだよね。

【レビュー】『家庭医という選択』

今回の書籍

タイトル :『家庭医という選択』

著者   :舟見恭子

出版社  : エイチエス

発売日  :2015/05/18

価格   :¥1,815

読了年月 :2021/09/20(学部3年)

作品紹介・あらすじ:

内科も外科も小児科も、予防・在宅医療まで「全身まるごと」診てくれる医師。それが家庭医です。

読みやすさ:★★★★★

平易で一般向け。章ごとに20~30ページで読みやすい。

面白さ:★★☆☆☆ 

家庭医に対する興味次第。第1章で自分には合わないな、と思ったのであまり楽しめなかった。

医学知識:★☆☆☆☆

新たな専門領域である家庭医の黎明期についての概略が記載されている程度。

 

感想

家庭医を目指す、興味があるなら読む価値ありなのではないだろうか。家庭医の生の声が聴ける。この本の中で、家庭医にはマインドが重要だと何度も言われているので、心持ちについて知っておけるのは良いだろう。

ちなみに私は「自分の目指す医者像は食い扶持のための職業医師であり、家庭医ではないな」と序盤から感じていたためイマイチ刺さらなかった。

登場する先生方も進路に苦労したと語っているように、学生のうちから自分の進む道を考えないといけないだろうなと感じる。他の専門医についても、この本のような生の声を知れるものが読みたいなと感じた。

 

自分用メモ:

家庭医周りの情報はいままさに動きがあるので、この本は少し古い情報になります。

序章:家庭医とはなにか、定義や役割についての簡単なまとめ。2020年から専門医として登録される出来立てホヤホヤの領域

第1章:家庭医とはコミュニケーション、チームワークがものをいう。稼ぐための仕事として医者を選んだ人には向いていない。人間関係に面白さを感じられる人向き。開業するさいのビジネスモデルとしては良いらしい。

(眼科とかは緑内障白内障で診察の7割いけるらしい) 

第2章:女性の方が家庭医の適正(需要)あり。

第3章:研修医には家庭医、総合診療を学ばせるのが良いというのは賛成。

第4章:プライマリ・ケアは日本の医療費問題への解答。

【レビュー】『医師は最善を尽くしているか―医療現場の常識を変えた11のエピソード』

今回の書籍

タイトル :『医師は最善を尽くしているか―医療現場の常識を変えた11のエピソード』

著者   :アトゥール・ガワンデ

出版社  :みすず書房

発売日  :2013/07/19

価格   :¥3,520

読了年月 :2021/09/18(学部3年)

 

作品紹介・あらすじ:

手洗いの徹底で院内感染をゼロにできるか? 兵器は進歩しているのに、なぜイラク戦争では負傷兵の死亡率が第二次世界大戦時の3分の1にまで下がったのか? 新生児の死亡率を30分の1から500分の1まで激減させたある麻酔医の工夫とは? 医師の仕事とは正確な診断をつけたり、手術の技術的な腕前を磨いたりすることだけではない。臨床現場のなにげない習慣や姿勢によって可能になる医療の「改善」を描くノンフィクション。

 

読みやすさ:★★★★★

1章20~30ページ程度の短編なので、集中して読みやすい。

面白さ:★★★★☆ 

話ごとにきっちり医療関連のテーマがあり、趣も変わるので面白く読めた。

日本と米国の違いから少々読み飛ばしもした。

医学知識:★★☆☆☆

医療の変遷や転換点について軽く触れてある程度だが、好奇心を掻き立てる呼び水としての効果は期待できるかも。小噺ひとつで記憶の定着も変わってくるので、緩く出てくる知らない単語は大歓迎。

 

感想

実際の医療現場の取材を題材に、「手洗い」や「感染症根絶」についての歴史や進歩・転換点を綴っていく。その中には医療従事者として姿勢を正させるようなくだりもあるので、読んでいてハッとなる。あとがきによると訳者は、医学生や研修医にこそ読んでほしいとしており、どうりで知識がないのに読みやすかったわけだと膝を打った。

 

自分用メモ:

「手洗い」コロナ禍の今、いやというほど言われてきた手洗いについての歴史は興味深い。

「掃討作戦」感染症を掃討する壮大さとその実績。

「戦傷者」死者が減るのは銃火器の強化に医療の進化が勝っているだけ。新技術を待つだけでなく、既存技術の組み合わせでパフォーマンスを改善できる可能性がある。

「裸」患者との距離感。近すぎれば誤解による不信、最悪訴訟である。自分だったらどんな距離感が良いだろうか?私は仕事によるリスクを避けたいので、業務に支障が出ない程度に堅牢な壁を築くことになりそうだ。

「医師が尽くす相手」(医療過誤)医療訴訟に原告が勝つには、原告が如何に被害妄想的でないか、がとても重要である。(陪審員制度のアメリカの話ではある)交通事故。

「医師の給料」この話の書き手は「医師になると決めたとき、少なからず社会への貢献に根差したはずだ」という考えで医療をビジネスととらえられなくなっている。その前提はおかしいと思うのだが。職業でしかない。支払い体系の話は米国準拠なので参考にならないかも

「死刑執行室の医師」米国では薬殺刑のために医療従事者の協力が必要になるみたいだけれども、日本では死刑に医師がかかわるのかな?死亡確認のみかな。

「戦い」医療は不確実性の塊である。「確実に」治せないということはなく、それはあらゆる手段を尽くし試していないに過ぎない。しかし、効くかもしれない治療を探し適用するというのが常に正義であるわけでもない。それは肉体的にも精神的にも苦しみを与える結果になるかもしれない。どうするのが良いのか常に考え、戦うしかないのではないか。おそらくそこに答えが無くとも。(個人的にはこれは無限の労力なので、冷酷に割り切りたい)

「スコア」砕頭器cranioclastなんてものがあるのかよ。名前聞いただけですべてを察する。アプガースコアという臨床現場でのちょっとしたアイデアが功を奏しているらしい。ひと工夫が強い。

「ベルカーブ」医療の品質をグラフ化するとベルカーブになるらしい。自分のいる施設がどの辺にいるのかなんて知らない方が幸せな気もする。医療者にとっては。被医療者だったら知りたいよなあ。

「パフォーマンス」医療知識を持っていること以上に、単純な工夫でもパフォーマンスを上げられる。そのことを意識できているか?という話。